2.8 出版権
出版権とは

あかり
複製権者のみが有する権利があります。
それが「出版権の設定」です。
かなた
ほほう、どういうものですか?


あかり
それではまずは出版権がどういうものか解説しますね。
(出版権の設定)
第七十九条 第二十一条に規定する権利を有する者(以下この章において「複製権者」という。)は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。
(2項省略)
(出版権の内容)
第八十条 出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する。
2 出版権の存続期間中に当該著作物の著作者が死亡したとき、又は、設定行為に別段の定めがある場合を除き、出版権の設定後最初の出版があつた日から三年を経過したときは、複製権者は、前項の規定にかかわらず、当該著作物を全集その他の編集物(その著作者の著作物のみを編集したものに限る。)に収録して複製することができる。
3 出版権者は、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製を許諾することができない。

あかり
出版権は著作権法の第79条から88条に規定されています。
80条1項より、出版権とは、
①頒布の目的で
②著作物を原作のまま
③印刷その他の機械的又は化学的方法により
④文書又は図画として複製する権利
といえます。
かなた
またいろいろ条件がありますね…。


あかり
ま、要するに複製する権利を持っている人は、著作物を原作のまま出版社等に出版をさせることができる権利があるって感じでしょうか。
そして④の条件がありますので、これは映画や音楽ではなく主に文芸のためのものになります。
かなた
なるほどー。


あかり
では他の条文も見ていきましょう♪
(出版の義務)
第八十一条 出版権者は、その出版権の目的である著作物につき次に掲げる義務を負う。ただし、設定行為に別段の定めがある場合は、この限りでない。
一 複製権者からその著作物を複製するために必要な原稿その他の原品又はこれに相当する物の引渡しを受けた日から六月以内に当該著作物を出版する義務
二 当該著作物を慣行に従い継続して出版する義務
(出版権の消滅の請求)
第八十四条 出版権者が第八十一条第一号の義務に違反したときは、複製権者は、出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる。
2 出版権者が第八十一条第二号の義務に違反した場合において、複製権者が三月以上の期間を定めてその履行を催告したにもかかわらず、その期間内にその履行がされないときは、複製権者は、出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる。
3 複製権者である著作者は、その著作物の内容が自己の確信に適合しなくなつたときは、その著作物の出版を廃絶するために、出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる。ただし、当該廃絶により出版権者に通常生ずべき損害をあらかじめ賠償しない場合は、この限りでない。

あかり
81条では出版権者の出版義務が規定されています。
出版権を設定されておきながら出版を行わないことはできないわけですね。
複製権者から出版に必要な原稿や原品等を受けてから6ヶ月以内に出版しなければなりません。
また、2号より、慣行に従って継続して出版する義務も定められています。
かなた
出版権をわざわざ設定するということは当然出版されることを期待してるわけでしょうから、確かに当然といえばそうですね。


あかり
出版してもらえない場合には、出版権者に通知したうえで出版権を消滅させることができます。(84条1項)
また、慣例に従った継続出版をしてもらえない場合にも、3ヶ月以上の履行期間を定めたうえで催告し、それでも実行されない場合にはこちらも出版権を消滅させることができます。(84条2項)
(出版権の存続期間)
第八十三条 出版権の存続期間は、設定行為で定めるところによる。
2 出版権は、その存続期間につき設定行為に定めがないときは、その設定後最初の出版があつた日から三年を経過した日において消滅する。

あかり
また、出版権の存続期間は79条の設定行為で定めることになっています。
定めがないときは最初の出版があった日から3年とされています。
(出版権の登録)
第八十八条 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
一 出版権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)、変更若しくは消滅(混同又は複製権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
二 出版権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は出版権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
2 第七十八条(第三項を除く。)の規定は、前項の登録について準用する。この場合において、同条第一項、第二項、第四項、第八項及び第九項中「著作権登録原簿」とあるのは、「出版権登録原簿」と読み替えるものとする。

あかり
そして、出版権は文化庁に登録をすることができます。
文化庁への登録は他にもいくつか種類があるのですが、これらは行政書士も行うことが出来る業務です。
詳しくはまた後日改めて紹介したいと思います。
とりあえず現時点で言いたいことは、出版権は文化庁への登録をすれば第三者に対抗することができるということです。
どういうことかというと、たとえばA出版社とB出版社の2社に出版権設定を行ったとしたときに、A出版社が先に出版権の登録をしておけば、B出版社に対して自分の出版権を主張することができます。
これはつまり、出版権は排他的な権利であり、登録を行うことで独占して出版する権利を行使することができるということです。
また、これは言い返せば複製権者が出版権を複数の者に設定することは確実にトラブルのもとですので避けなければならないということでもあります。
かなた
うお、なんだか一気に難しい内容になりましたね…


あかり
要するに出版権は、複製権者と出版権者との間で独占して設定される権利だというイメージでいいかと思いますよ。
でもかなたは対抗要件のことぐらいは知っておきましょうねー。
かなた
対抗要件とかっていうと、どうも民法みたいな感じがしちゃいますね。
でも、はい、きちんと勉強しておきますです…。

(出版権の譲渡等)
第八十七条 出版権は、複製権者の承諾を得た場合に限り、譲渡し、又は質権の目的とすることができる。

あかり
また、87条では出版権の譲渡等の制限事項が規定されています。
出版権は複製権者の承諾を得ないと譲渡等をすることができません。
かなた
先ほど解説にあったとおり、出版権の設定は特定の相手だからこそ設定されるるものだからですね。
言うなればお互いの信頼関係によって設定されるものだから、勝手に他の人に移転しちゃうとおかしいわけだ。


あかり
そういうことですね~♪
まとめ

あかり
以上が出版権の解説です。
特にこれ以上はまとめることはないですかね。
繰り返しますが、出版権の登録は行政書士にもできる業務です。
他の知財関係、たとえば特許や意匠などは基本的に弁理士の業務なわけですが、一部の業務は行政書士にも認められています。
そういった話はまた後日ご紹介しますね!
かなた
わかりました。
楽しみです!

りょう先生の解説

りょう
今回は出版権についての解説です。
出版権は著作権法のなかでもそんなに目立った内容ではないかとは思いますが、ある程度条数があるということで、改めて勉強しなおしてまとめてみました。
ぶっちゃけると私もこの解説のために勉強したような感じです。(笑)
解説も本文で行ったもので充分かと思いますので、改めてここで解説することはありません。
次回は著作隣接権について解説します。
わかりにくいことやご質問がありましたら、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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